この夜をとめてよ
愛してる、っていう言葉がさよならよりもかなしい、っていうあたりがすごく望主だとおもう。
っていう久々P3P話。
これのドラマ超すきなんですけど。
たまき!たまき!!状態。
ドラマがすきだからじゃないけれど、この曲めちゃくちゃすき。ほんとJUJUさんはすてき。
さてさてひっさびさにぺさん書いたりしたので放置。
ぺいってしておく。
・・・・・・あれ、なんか予定外に長い・・・・・・・・・・・・・・・・・?
ふふ、あとでちゃんと形式直そう・・・・。
もちはむ、だけど一応。どっちかというとハム子+ゆかり+風花、かなぁ。
わたしの中でゆかりはそーとー自分勝手な女の認識らしいということがよっくわかった。
年相応?みたいな。あんまり好みじゃあ、ないなぁ・・・・・。書きやすいけれどもが。
とりどりのはなを気ままにうつろう、色鮮やかなバタフライ。ちょうちょ、ではなく、バタフライなところが多分ミソ。彼女を形容するならばそんな言葉。
ばしん、と机をたたいたときにしぱしぱと瞬いた長い睫毛は、まさしく蝶の睫毛みたい、ととりとめなく少女ちっくなことを思う。‥‥どこのマスカラ使ってるのか、後で聞きだそう。いや、今はそれよりも重要なことがあって。
微妙な沈黙が漂う同級生組女子会(ただしアイギスのぞく)、イン、琴音の部屋。私は、きりりと彼女を睨みつけ、肝心のことを切り出したのである。
「で、あんた、彼とは付き合ってるの?どーなの?」
「え!?リーダー、恋人いたんですか!?」
驚いたように風花が琴音を見る。
問題の人物は、うろたえた風花が落としかけたティーポットをかるく受け止め、こぽこぽとお茶を注いでいた。
「ああ、そうか風花は知らないか‥‥今うちのクラスですっごい噂になってるんだけど」
「そ、そうなんですか‥‥」
知らなかったです。とほんのり頬を朱に染める風花が非常に可愛いです。
‥‥で、どうなのよ。と目線で問えば、さり気なく私達のカップにもお茶のお代わりを足していた彼女は、「ねぇ、ゆかり」と心底純粋そうなかおで逆に尋ねてきた。
「それ、誰とのことかしら?」
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
頭を抱えた。
「‥‥あんた、それは、またがけカミングアウト、と取っていいわけ?」
「琴音ちゃんってば、おとな‥‥」
「いや、風花、その感想微妙に間違ってるから」
実際彼女には噂が絶えない。元々、彼女自体ひとの目を惹きつける性質で注目されていたのもあるのだろう。おまえけに相手はあの、女生徒人気ナンバーワンの真田先輩はじめ、いろんな意味で注目度の高い相手ばかりだ。付き合っているのではないか、とまことしやかに噂されることは、幾度もあった。
彼女にまつわるうわさだとか都市伝説だとか、いくつあるのか私だって知らない。
とにかく、そんな噂多き女たる彼女だから、面と向かって聞いたことはないものの、誰かしらとはきっと付き合っているのだろうと思っていた。だから、彼女の次の一言は大変意外なものだった。
「またがけ、はできないわよ。だって、誰とも付き合ってないもの」
「え?」
「期待に沿えなくてごめんね。ゆかり」
くすくす、と耳触りのよい笑い声。
愉快そうなそれに、思わずつめよるような口調にならざるをえない。
「え!?でも、だって、あんなに噂‥‥」
「うわさは、所詮噂でしょう?」
「り、リーダーってば、何だかほんとにオトナ‥‥」
「こういうのって、告白された、っていうだけで尾ひれがつくでしょう?イタチごっこよねぇ、困るわ」
「そっかー、そうよね、人の目ってどこにあるんだかあっさり知れ渡るものねー‥‥‥‥って、ちょっとまちなさいよ!!」
思わずぽかん、というかまじまじ、というか、そんな顔で彼女を見つめる。
考え込むような仕草をしていた彼女はかおをあげると、本当にわからない、という顔をして「なぁに?」と問いかけてくる。それがなんだか大変しゃくにさわったので、むっとしたかおを作ってちょっとそっぽを向いてみた。
「・・・・・・その話、きいてない。告白されたとか、どうとか。」
「そ、そうです。は、初耳ですよリーダー‥‥っ」
「言わなかった?わたし」
「「聞いてないっ!!!」」
「やだ、ごめんね。たいしたことないと思ったいたから」
その、ありふれた。
どこにでもある言葉が、やけにちくりとひっかかる。
告白をされただとか、こんなことがあっただとか、他愛ない愚痴とか。たくさん話をした覚えがあるのに、そういえば、彼女からその手の話をあまり聞いた覚えはなかった。それはつまり、ないのではなく、話していなかったという、そういうことだ。
覚えた苛立ちは、理不尽なのだろうか。風花をちらりと見ても、彼女はほうほうと感心するばかりで。‥‥がじりと噛み砕いたクッキーが、甘いはずなのにひどくビターに感じる。苦い。
「‥‥はぁ、あんた、ほんとすごいわ」
「えぇ?普通のジョシコーセーよ?」
「どこがよ」
苦い理不尽さを呑みこんで八つ当たりまがいに呟く。
ああ、サイアク。私ってこういうキャラじゃないのに!アンタのせいよ!!というそれこそ八つ当たりはぐっとこらえておく。
「‥‥こんだけ注目されまくってるのは、フツ―とはかなり程遠いってゆーの!!」
「ちょっとだけ、ひとより付き合いが多いだけなのに」
「いやそれ、絶対違うでしょ」
「でも、たしかにリーダー、付き合いの幅広いですよね。だって、全然知らないひととお話してるのも見かけますし」
「ふふ」
みんなすきなの。
やわらかく目を細めてわらう。微笑ましいモノを眺めるようなそれは、たとえるなら姉や母の類だろうか。それでも彼女は確かに少女で。そういうかおを見る度に、蝶みたいだなぁ、と思う。すべるように円上を舞う。くるくるひらひら、彼女は舞う。ひとしく。
‥‥だから。
だから、すこし、意外だった。
円がくにゃりと歪んだ先の人物。その相手がよりによってかれとは。
今まで何度もひとのくちに乗ってきた彼女の他愛ない噂を、今回確かめてみたいと、思ったのは。だからだ。
「で、結局ゆかりちゃんが確かめたかった噂の相手、って誰なんですか?」
タイミング良く言葉を紡いだ風花に、はっとした。
そうそう、と調子を合わせれば、琴音も首をかたむける。
「綾時くん」
綾時、と名前を口にした瞬間、彼女の目がうっそり細められた、ような気がした。その意味は知らない。「そう、」と軽い調子で音にされた言葉だけは、確かに耳に届いた。
「‥‥ああ、もしかして、アイギスがいない時にお茶会したの、だからなの?」
「さすが風花。あたり。‥‥で、どうなのよ、琴音」
「付き合ってないわよ」
にこり、と音がしそうな鮮やかな微笑み、即答。うそだ、と思う。
いや実際付き合っていないのかもしれない、けれど。ちがう。
「‥‥じゃあ、聞き方を変えるわ。アンタは、彼のこと好きなんでしょう?」
すぅ、とめを細める。
ゆるりと弧をかく唇のラインは三日月。あかいグロスがつやつや輝く月は、美しくわらった。
うん。すき。
たった二音のそれは、おなじように姉であり母のような様相をもって響く。けれど、それだけではなく。びっくりするくらいにその眼はゆらゆらしていた。みたことがある。恋を語る少女のそれに似ている。けれど、もっと。もっとあぶない。
たとえるならば、きらりとひかる、獣のまなこ。‥‥でも、たぶんけものじゃなくて、それは人間の女のまなざしなのだろう。あまりにそれまでの、浮世離れしたひらひらまう姿とかけ離れているからこそひどく目につく。同時に、地面にひきずりおろす。いやがおうにもつきつける。人間のサガ、だとか、そういうもの。
その時の気持ちをどう表現すればいいのかよくわからない。
安堵のような、きもしたし。寂しいような、きもした。
彼女は、ニンゲンで、少女で、女。わたしと同じ、あさましさを持つイキモノ。
「‥‥なんで付き合わないの?綾時くんだって、どう見てもあんたのこと、すきでしょ」
ふたりで一緒にいるのを初めて見た時、感じた違和感。
他者をまじえて、あるいは大勢の中で言葉をかわすふたりを見た、そういう時にも少しだけ思っていた、けれど。そんなのとは全然違う。
ぜんぜん、ちがった。
かわされる会話の数は、綾時の性格を思えばあまりに少ないし、琴音の性格を思えばあまりに装飾もない。静かにまたたく星のよう。
ただ、ひたりと隣に寄りそう。それが、あまりに自然で、あまりに不安で。当たり前に見えるのに、どこか不自然。ひどく近いのに、遠く見える。そんな、違和感。
すくなくともその空間は、あきらかに「特別」だった。だから私は、「付き合っている」のかと取ったのだけれど。
しかし琴音は、困ったように首を傾げる。
「うーん、それは、どうかしら」
「どう、‥‥って、どういうこと?琴音ちゃん」
「たぶんね、好かれてはいると思う。でも、それは私のすきとは、すこうし違うと、思うのよ」
かすかにまなじりを下げる表情はどこか寂しげで。そんなことあるはずもないのに、泣いているようにも見えた。あるはず、ないのに。
意味がわからなくて、置いて行かれたような感じもして、ぐしゃぐしゃとして。
ああ、あのふたりは、「ちがう」んだ、と。そう至った。
あのふたりは、同じ世界を内在していて、それがひどく似ていて、まったく違う。そういう、存在なんだと。
全然ちがうの。わたしと、かれは。
ぽつりと落とされた無色の響きは、まるで涙のおちる音のようにひそやかに。
その静かすぎる言葉と、長い蝶の睫毛がふるりとふるえていたのが、ひどく私の心に残った。