恋を出来ない人間のことを言うのでしょうか。別に否定はしない。
私だって「恋愛出来る気がしない」とか「恋する自分気持ち悪い」とか「そも他人をすきになれる気がしない」とかなにより「決定的に他人に好かれるわけがないありえない」とか、なんていうかなんていうか言いたいことはあるけれど、どうやったって負け犬の遠吠えにしか受け止めてもらえないのだろうな、と思うので。
理解をしてもらう努力は必要ですか。
でも別段ことここに関しては理解されなくていい。どうぞ見下せばいい。
でもかえる気もないし、見下されたのならば笑ってやる。
っていう主張。
わたしが重視しないところで見下されて人間的に否定されるのは、でもやっぱり悔しい。
だって、
必要ないんだもの。
わたしには。
しょうがないじゃない。
とか。
あ、腹立ってきたwww
たぶん恋愛的な意味でひとをすきになれなくて、ひとにすきになってもらえなくて、すきになってもらう努力ができないことは、わたしの永遠のコンプレックスなのだと、おもう。
できないものはしかたない。
やるきもない。
でもくやしい。そんなもののせいで否定されるのが悔しい。
大切なのはわかってるけど、でも、やっぱりくやしい。
わかってもらえないのが分かってるから、なおのこと。
あ、つづきは零崎シリーズそのさん。
たぶん妹+兄。
わたしは予想外に兄がすきである。びっくりだ。
「伊織ちゃん、萌えという言葉を知っているかい?」
「…………はい?」
かみさまほとけさまてんにめしますちちうえははうえみなみなさま。
めでたいです、ついに『兄さん』が真性の変態に目覚めました。
「って全然まったくどうしてこうしてめでなくなーい!!!何ですかその無茶な前フリ!?歴史系マニアじゃなかったんですか、目覚めますたか、ついに目覚めちゃいましたか双識さん!?」
「うん、『知ってるかい』という問い掛けだけで変態とオタクのレッテルを貼られるあたり、君がどういうめでお兄ちゃんのことを見ているのかよくわかるよ、伊織ちゃん」
「自業自得ですよ、っていうか変態はもともとですよ」
「いや僕は不純に純粋な家族愛であって、うふふ、うん、まぁ、それは良しとしよう、今は。」
‥‥今、よくない言葉がさらりとまざった気がしますが。お兄ちゃん。きのせいですか。
最上級でうろんげな眼差しを向けても、きらきら瞳を輝かせた変態はけろりとしたもので、針金のような腕の先のそれこそ針金のような指先をくるりと回す。胡散臭い奇術師のようだ。
「それで、萌えという概念は知っているのかい?」
「えー……まぁ、昔の友達に漫画とか好きな子がいましたしわかるにはわかりますけどぉ……、」
「結構、素晴らしい!」
にこり、と無邪気とも評せられる笑顔を浮かべて、イケナイワードを平然と連発する変態は、さらににこにこと笑って意味のわからない言葉を続けてきた。
「なら、兄萌えという概念もわかるね?」
「……はい?」
「世の中にはお兄ちゃんなり兄上なり兄さんなり上の男兄弟に憧れるひとがいるんだよ」
「へ、へぁ?」
どう答えたものかわからず思わず口のかたちが「へ」でかたまる。間抜けです。すっげぇ間抜けですがそれどころじゃあるめぇです。
いけない世界にいざなわれている、つまりがまさしく進行形ですか、お兄ちゃん!!
思い切り間抜けにテンポ悪くうろたえるこちらに向かって流れるような言葉はとどまることがない、のは常のごとく。輪をかけて悪化しているように見えうるのは、気のせいだと信じていいですかお兄ちゃん。
期待に反して、流れる言葉は川のようで海のようで堰をきったダムのよう。
「そう。そもそもおおむねたいがいにして、ひとにはその役割における空想で妄想で願望がある。つまるところが、理想だね、うふふ。言わずと僕の理想はお察し頂けると、思うけれど。」
「い、いもうともえですか……」
「出来れば家族萌えと言ってほしいね。うふふ。ああ、いやいや、それも間違いかな。私のはぴゅあな家族思いだから」
「……うそだ」
「はい小声で文句を言わない、そこ。まぁともかくともかく、だ。君の中にも兄という記号に対する憧れ的なものがあったりするだろう、と僕は聞きたいまいすいーとしすたー」
「英語にしてもキモさ三割増しです双識さん!!あと、私何気にお兄ちゃんもお姉ちゃんもいたりしたわけですよ。」
「いやだな、ふふ、伊織ちゃん、だからこそ、だよ」
わっかるわけねーだろ。
と怒鳴りたい自分をぐぐっと心の中に封印して、まともな答えは期待しないながらも、聞いてみた。
「……要するに、何が言いたいのですか。」
「うん。伊織ちゃんに愛されるかぞくを目指してみようかな、と思いました」
あと伊織ちゃんをここまで幸せに守ってくれたり愛してくれたり愛されてくれたりした、お兄さん羨ましかったりします。
――ーーー思わず、きょとん、と瞬いた。
おお、めずらしく、まともな答えだ、とまず驚いて。
そして、勉強できる、と頭がいい、と言われてきたけれど実際のところ妙に鈍いその頭が、ようやく遠回りで七面倒な彼の言いたいことを理解してくれた。
ぱく、と開きかけた口を結んで、見上げた高い位置にある顔は相変わらずの甘い笑顔。家族限定、制限上限ございません、年中らぶのセール中。
‥‥だからこそ、異質。だからこそ、異常。
「まったくもって普通のひとでしたよ。つまらないくらいに。」
「でもだからこそ、合格だ。」
さらりと言う。なんでもないことのように。わずかな羨望と、かなしさをこめて。けれどたしかに横たわる諦めが、そのかおを笑みで彩るのだろう。
みにくいなぁ、と思った。
醜くて、いとしい。無様さが、こっけいさが、いとおしい。あなたの平凡にあこがれて逸脱した愛情は、歪で崩れて間違って、異常だけれどひどくやさしい。
うふふ、と淡く口元をゆがめてそれを受け入れてしまうことも、きっと、異質なのだろうけれど。
「双識さんには、わたしが合格をあげます。私のお兄ちゃんとして、双識さんは合格です。」
いいの。それが私達の『家族』のあり方ならば。
異質に私を愛するあなたを私は歪んで愛してあげるから。
「だいすきですよ、お兄ちゃん」
(いつ、どこ、どうやって、とかは突っ込んではいけない。
こんな会話、してほしかった、っていう夢の話。
しかたないじゃない。だってお兄ちゃん勝手に死んじゃうんだから。ばか。好きだ)